きょうの診察室

Vol.02

あかちゃんについてききたいこと

乳幼児健診にきょうだいがついてきてくれることがあります。
私は待合室へ迎えに行ってきょうだいをみつけたときには、よければ一緒にどうぞ、と声をかけることにしています。

きょう、健診の見学をしていた看護学生さんに、質問はありますかと聞くと、「どうしてきょうだいも一緒に入るのですか」と尋ねました。

きょうだいにとっては、下の子の誕生は(とくにふたりめのこどもが生まれたときには)、自分の地位を根底から揺るがす重大なできごとです。

自身への注目が分散し、物理的にも自分に向けられていたいろいろな時間や物が減ります。
アイデンティティが大きく変わってしまう一大事件なのです。

だからこそ、きょうだいを排除せずに、家族の一員として診察室に招き入れるように、私はしています。
診察室でできるだけきょうだいの名前を聞いて、「いっしょにきてくれてどうもありがとう」と労をねぎらいます。

「あかちゃん、がんばってもしもしするから応援してあげてね」、というとじーっと赤ちゃんを見守ってくれます。

きょうは4歳のお姉ちゃんにさいご、
「あかちゃんのことで、○○ちゃんは聞きたいことはありますか」
と尋ねると
「あかちゃんのあたまをなでなで、、、しても、、、いいですか」
と。

たしかに親御さんからすると赤ちゃんを撫でたおすお姉ちゃんの姿がおっかないようで、診察室でも「こら、さわんないの」という言葉がなんどかありました
「もちろん、たくさん、やさしく、なーでなで、してあげてね」
というと、うれしそうににっこりうなづいてかえりました。

ライバルから家族になっていくプロセス。
みんなで応援できたらいいな、と思っています。

(小児科医 山口有紗)



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<プロフィール>

小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。

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