診察室の机の上には、いろんなおもちゃやつみきを置くので、こどもが手を伸ばして遊びます。
1歳前後のこどもは、手を伸ばしてつかんで、口に入れたかと思うと投げて次のものに手を伸ばすので、床にいろんなものが落ちることになります。
ある女の子も、つかんでは離すので、次々に床にものが落ちます。
お母さんはそのたびに、「すみません、もう」と謝って、拾おうとしてくれます。
「おかあさん、大丈夫です。落としたらあとで拾えばいいので。
それにしても、じょーうずに、つかんで離しますね」
とお伝えすると、あ、、、とほっとした顔になりました。
物を投げるのも、ぐちゃぐちゃにして手づかみで食べるのも、「いやー!」って叫ぶのも、人見知りをするのも。
対応に手間がかかることもあるけれど、見方によっては、こどもにとっては、3か月前にはできなかった、小さな進歩かもしれません。
ほんとうはうれしいことなんだけど、目の前の大変さで、両手で喜ぶことができないこともあると思います。
「落としたら拾い、散らかしたら片づける、迷惑をかけてしまったら謝る」、
シンプルだけどご家族だけでは大変だから、みんなでやっていくことで、こどもの成長をこころから喜べる環境づくりができるかもしれないなと思った一日でした。
(小児科医 山口有紗)
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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