診察が終わるとき、会話ができる子どもには、
「●●くん、なにかきいておきたいことはありますか」
と尋ねるようにしています。
ある女の子は、おうちで安静が必要な病気で治療中です。
なにか聞いておきたいことは、と尋ねると、
「このびょうきは、なにがげんいんで、なるんですか」
じつはその疾患は現在の医学でも原因がはっきりしていません。
とてもするどい質問だね、と、そのことを丁寧に説明して、
「大切なことは、●●ちゃんが悪かったからこの病気になったわけじゃないんだよ」と伝えます。
もうひとつ聞きたいことがある、と。
「なんで、わたし、なんですか」
そうだね、そういうふうに、思うよね。
なんで●●ちゃんだったかは、本当にたまたまであること、
でも、たまたまでは納得いかないくらいたいへんだと思うこと、
それでもやっぱり大切なことは、●●ちゃんが悪いからではないということ、
だから一緒に協力してがんばりたいこと。
を伝えました。
そっか、と少しすっきりした顔で、
がんばってじっとします、と言って握手をしてくれました。
「学校は、お勉強もあるから、体育をお休みにして、休み時間にたくさんはしゃがなければ行ってもいいよ、どうしたい?」
と聞くと、
「ともだちにさそわれると、ことわれないから、やめとく。いえでべんきょうする」
お母さんと、ううんと唸って、
「お子さんの考えを尊重して、そうしましょう」
と、診療を終えました。
子どもは年齢にかかわらず、自分とそれを取り巻く環境を、
本当によく観察して考察しています。
きょうも勉強させてもらいました。
(小児科医 山口有紗)
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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