きょうの診察室

Vol.18

うちゅう

発達をみさせてもらっている女の子。
いわゆるおとなにとっての「困りごとの多い子」で、
じっとしていられなかったり、輪に入れなかったり、不器用さが目立つといったことがあり、幼稚園の先生に言われて、当院にきて、しばらくたちます。

ある日の言語聴覚士さんとのやりとりのカルテを見ていました。

あかいものは? -「わかんない。」
きいろいものは? -「、、、」
ちいさいものは? -「わかんない。」

おおきいものは? -「、、、うちゅう。」

ああ、この子の見ている社会って、どんなだろう。
胸がじんとしました。
尺度で測れない、点数になれない、彼女たちのことばと想い。

子どものもっているよさが、いっぱいに輝けるように。
自分たちの使っているものが、なにをはかっているのか、みているのか、
枠やスケールの向こうの子ども自身を見つめること、いつも忘れないようにしたいなと思います。

(小児科医 山口有紗)



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<プロフィール>

小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。

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