最近の救急外来で、ときどきあう女の子。
胸が痛かったり、のどが痛かったり、いろんなことで夜中にやってきます。
でも熱もなくて、診察しても大きな問題はなさそう。
最初はいろいろいわゆる治療のアドバイスなどもしていたのですが、なんどか会ううちに、
「きょうは、からだのしんさつでは、わるいところがなさそうだよ」
と、わたしの意見もちゃんと伝えることにしました。
そうするとその子が、ふーっと息をして、なんとなく何かを切り替えているようにみえたからです。
先日も、夜中に出会ったので、
「きょうは、からだのしんさつでは、わるいところがなさそうだよ」
と伝えます。
「うん。じゃあ、いいね」
とその子はおうちのひとをみます。
お母さんが、「学校があしたあるのもあるのかな」と。
じっとその子の言葉を待っていると、
「20分休みが、にがてなんだよね」
と教えてくれました。
20分休み、かあ。
それはもしかしたらわたしもあんまり得意な類ではなさそう。
「いろんなとくいとにがてが、あるね。
先生はおとなだけど、5人以上で集まって遊ぶのが、あんまりとくいじゃないよ」
と打ち明けると(その子が打ち明けてもいいよオーラを出してくれていたので)、
「わたしは5人はよゆーだね」
といいます。すごいな。うらやましい。
「でもいろいろ、ね」
大人っぽく肩をすくめます。
ぽ、とその肩を叩いて、
「ぐあいがわるかったら、またいつでも、それを話していいんだよ」
と伝えました。
救急外来の資源の利用について言えば、いろいろな論議があるかもしれませんが、
医療は子どもや家族システムのさまざまな不調をうけとめる、受け皿のひとつであれればいいな、と思っています。
それにしても20分休み、そんなものがあるとは、、、!
子どもたちの生活は、いろんな(わたしからみると)チャレンジの連続、なのだなあ。
すごい、すごい。みんなほんとに、すごいね。
(小児科医 山口有紗)
山口先生のきょうの診察室への想いについてはこちら。
https://www.kidsrepublic.jp/pediatrics/today/detail/vol00.html
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<プロフィール>
小児科医師。専門は子どものこころ。
目指しているのは、「子どもとその周囲が、少ししんどいときにこそ、安心してつながることのできる社会」。
高校を中退後、単身渡英し、ロンドンのインド人病院でボランティアを行う。
帰国後は京都で働きながら児童養護施設や不登校の子どもとかかわる。
大学入学資格検定に合格後、立命館大学国際関係学部で開発支援や母子保健を学び、約30の国や地域を歴訪。
卒後山口医学部に編入し、医師免許取得。国立国際医療研究センター病院小児科コース研修医、東京大学医学部附属病院小児科、茅ヶ崎市立病院小児科を経て、2017年4月より国立成育医療研究センターこころの診療部や児童相談所などで子ども・家族のこころの診療に従事。
診療の傍ら、子どもに関わる多様な専門家がつながるコミュニティ「こども専門家アカデミー」を主宰している。
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